ベラルーシど田舎の世界遺産の街、ミールとニャスヴィシュ。世界遺産の割にアクセスが超悪く、同国人ばかりが観光に来るやる気を感じない場所。
そんなミールとニャスヴィシュはソビエト博物館のベラルーシで数少ない、中世的で素朴な観光資源。都市部ミンスクとはまた違った雰囲気と素朴な景色が好きな人におすすめ。絢爛豪華な宮殿や城を期待するなら、行くべきはベラルーシではなく西欧だ。プロテスタントなのに豪華な教会をもつドイツとか。
ミール城
ゲストハウスの娘さんは英語が話せる。おそらく羊と同じレベル。大学で観光と自然を学んでいるそうで、ベラルーシのおすすめなども教えてくれた。
ベラウィジの森について聞くと「あそこは劣悪な条件で動物を管理していて可哀想」と写真を見せてくれた。自然公園にいる野生動物ではなく、檻に入った動物園的な動物。自然の場所で偶然動物に合うのは実際難しいので、観光用かな?・・・実際熊でもバイソンでも出くわしたらたまったもんじゃ無いけど。怖すぎる。
明日ミールに行きたいと相談すると、
「バスは1日一本ずつ。ニャスヴィシュ→ミール→ニャスヴィシュの順。チケットはバスの運転手買える。気をつけてね、一本しかないから!」
と教えてくれた。
昼過ぎ、ニャスヴィシュ中心部からミールへ指示通り向かう。どのバスか分からず聞きまくっていたら、バス待ちのおっちゃんが助けてくれた。行き先確認から、運転手への説明まで全部。ベラルーシでは労働従事者よりこういう偶々出くわした方々の親切に助けられている。
ベラルーシ旅行の羊的コツ。英語話者を捕まえたらチャンスを逃さず可能な限り教えを乞う。出ないと次にいつ捕まるかわからない。
無事ミールへ。
素朴な城。
中庭までは無料だが、建物内に入るにはチケットが必要。そして、チケット売場は城外の入り口。・・別の入り口から入城してしまった羊は素通りしてしまい、再度戻ってチケットを買う。
ベラルーシの形。お洒落じゃん!
中庭に入り、そこから各博物館内へ。正面の博物館が1番大きくメインになる。
博物館①
ユダヤに対する展示もある。ユダヤ人の居住区は決してドイツやポーランドのみでなく、世界中に散らばっているのを再確認。ホロコーストが起きたのがナチスが侵攻した地域だけって事である。
タペストリーや城壁の名残など順に展示を見て回る。う〜ん、正直簡素で物足りないとか思っていた。ここには特別展的なエリアが多数あり、ルートがわかりにくい。え?ここ上がるの?という急な階段を上がると・・
すごい綺麗!特に赤で囲った装飾の天井は素敵!テキスタイル好きには嬉しい壁のタイルや天井装飾!!やっと楽しくなってきた!
楽器の展示。ロシアとの違いがわからん。
使用されていたタイルや修復の様子など。
地下の貯蔵庫はわかるけど、なぜ食卓?
ミール城②
次の博物館は塔へ。ここは地下牢②と塔③で半券2枚消費。
この上↑に登る。
地下牢は小さく、ふ〜ん・・で終わり。
急な階段を登り、塔へ。
途中の教会。
英語の説明も時々あり。
外通路から中庭が見える。
これは日本の城でもよくある石落とし。
中世の頃の戦いの話も。このあたりの歴史はロシアやポーランド、ドイツなどとごっちゃになって、本当に混乱する。
世界遺産の城に住み着いている猫。のどか。
外通路はこんな感じ。
急な階段の上り下りに疲れ、出口に降りたところに最後の博物館④。もはやチケット係もおらず、勝手に入れ的。
いい感じに満足した。バスの乗り換え時間内に急ぎ足ではあるが、観光も間に合った。今日は順調・・そう思っていたら、また親に内緒のネタが出来てしまった。
帰宅難民、打つ手なし?
ミールのバス停で、のんびり水を買いバスを待っていた。今回は余裕・・その油断が災いし・・・見事にバスを逃した。
行きに乗った白いミニバスだと思い込み、目の前の青いバスをスルーしていたら、どうやらそのバスだったらしい。
マジか…Google Mapを見ながら、バスの時刻表を見る。ニャスビィシュは途中下車になり、その方面は…終わっている。詰んだ。
一応悪あがきに出てみた。地元の方に声をかけまくり、少し英語が話せるチャリのおばちゃんを捕まえ、「ニャスビィシュに帰りたいんだけど、バスを逃した!別の方法か、タクシーない?」と聞いてみる。
「Mip is small city..taxi нет!」
タクシー ニェット!マジで詰んだ。
おばちゃんが通りすがりの方を捕まえ、色々聞いてくれ、バスの時刻表をみて、「ここで待ってたら、1時間後にくるから」と。いや、時刻表には16:50と書いてあり、おそらく1日1本。
ダメ元ですがってみるかと1時間待ったが、ミンスク行きしか来なかった。
これ、ベラルーシや他の国でもたまにある。一生懸命教えようとしてくれるのだが、間違っている。表情などから悪意は全く感じない。だから、仮に間違っていても不快に思いはしない、相手にしてくれるだけ有難い。
知らなくても何とかしようとしてくれてるのかな…?単純に不思議だ。
さて、いよいよ詰んだので、①ミール泊(明日ミンスク行きだし、そもそもホテルはあるのか?)、②歩き(6時間)、③ヒッチハイク………
組み合わせる事にした。中間地点のゴゴリまで徒歩3時間、そこからバスがあるかも知れない。歩きながらタクシー或いはヒッチハイク出来たらラッキー。
ミール城付近にもタクシーは無く、歩いてすぐに両脇畑のど田舎に出た。ベラルーシでは大多数が農業に従事しており、トウモロコシが実っている。危ない以前に車がいない…
てくてく歩きながら、後ろから車の音が聞こえてくると振り返ってサインを送る。ニャスビィシュまでは兎に角直進である。
最初にカップルが止まってくれた。が行き先が違うので、彼らが左折するギリギリで降ろしてもらった。次に止まってくれたのは家族連れで、彼らの右折場所まで。感覚的にはこの二台で3割が止まってくれた感じ。そもそも交通量が圧倒的少ないうえに、トラックなどは猛スピードで走り抜けていくので無理だ。
これで距離の1/4は稼げたなぁ。と思いながらまた歩く。ゴゴリまで後1時間半…。日本でルーマニアでヒッチハイクの地元少女が誘拐のち殺害されたニュースが流れた直後である。ルーマニアを含め、交通網の悪いバルカン半島はヒッチハイク文化が根付いている。ベラルーシにはヒッチハイク文化は無さそうだ。リスクは承知で、交通手段を確保出来なかった私が悪いが、そんな事は今更言っても仕方ない。何とかしないと野宿が待っている。
自業自得だが、この溢れる闘争心と焦りを分かち合いたく、先日のロシア人に愚痴ってみた。
Z「今どこ?GPSで位置送れる?手段を調べてみる」
一応送ったが、彼が出来ることは何もない。手段があれば私もそうしてる。彼に出来るとしたら、ロシア語でタクシーを呼んでくれる事のみだが、そもそもタクシー会社がない。
女性は共感して欲しがり、男性は解決したがるのは世界共通・・・
30分ほど歩き、次の車は…と思っていると、前から来た車がUターンしてくれた。
彼「どこ行くの?」
羊「スパシーバ!ニャスビィシュに行きたい!」
彼「乗って!」
今までの車はカップルか家族連れだが、今回はおっちゃん1人。贅沢言わない、渡に船である。
最初白タクかと勘違いしてたが、私に気づいて帰宅前に拾ってくれた超優しい人である。自宅は反対方向に20キロらしい。
余談だが、スラブ圏の発音が難しく、私の「ニャスビィシュ」はまず通じない。それで一昨日酷い目にあったので、今回はハナからGoogleマップでルート込みの目的地を見せる事にした。キリル文字に慣れている場合、英語表記の地名は伝わらない可能性があるからだ。
片言の英語で話しかけてくるフレンドリーなおっちゃんで、奥さんと子供が2人いるそうだ。
彼「ベラルーシはどうだい?」
羊「綺麗な国だよね、自然が多くて」
ヒッチハイクで乗り継いでいる羊。悪口をいう身分ではとてもない。
彼「どこから来たの?」
羊「日本」
彼「日本とベラルーシはだいぶ違うだろう。ヒッチハイクは大変じゃなかった?ベラルーシにヒッチハイク文化はないから、みんな冷たいんだ」
羊「そんな事ないよ!私はバスを乗り間違えたんだけど、あなたで止まってくれたのは3台目!凄くありがたい!」
彼「このあたりはバスもタクシーも無いからね。旅行者はあまり来ないよ」
時折後部座席の羊を大きく振り返りながら飛ばすおっちゃん。頼む、一本道でも前を見てくれ。・・基本的に他人の運転に口は出さないが、事故ったら「ヒッチハイク中の日本人が・・」とニュースになるのかな・・とか考えた。
彼「ベラルーシについてどう思う?日本とはだいぶ違うけど」
羊「私はエストニア・リトアニア・ラトビアを回って、ベラルーシに来たのね。ロシアには行った事がない。日本人はビザが必要だから。バルト三国は反ロシアだけど、ベラルーシが親露なのに驚いたよ」
彼「ソビエト時代は実際良かったからね。仕事があったし、工場や農場など働くところがたくさんあった。ソ連崩壊してから働くところがない。スターリンって知ってる?彼の名前を取った通りとかたくさんあるよ。彼は偉大だった」
羊「今は?ベラルーシはソ連に近くて、ヨーロッパ最後の独裁国家とか言われているけど、ミンスクを含めて街は広くて、清潔で、整備されていて。知ってる?西欧はもっとゴミやホームレスだらけだよ」
このあたりの難しい話題は翻訳アプリを使いながらになった。運転中の彼は片言で伝えるのみである。とりあえず、今の政権には不満を持ってることがわかったが、深くは聞かなかった。
日本は経済的には発展しているが、森林大国で都市部に人とビルが集中する事や、実際の日本食はスシだけじゃないし、もっと安くて美味しい事など、色々話しているうちにニャスヴィシュについた。城を見せてあげると言うので、昨日訪れた事は黙っておいた。
彼「ここからまっすぐ行って、湖を渡ると宮殿が見えるよ。綺麗だよ」
羊「本当にありがとう。あなたにお礼を渡したいんだけど、いくら払えばいいかな?」
彼「思う金額でいいよ」
それ、1番困る答えだ。もともと財布にそんなに札は入れない主義。一昨日のタクシーを考慮したら20brいや30払っても惜しくない、と適当にお金を渡した。
ベラルーシが貧しいのはよく分かってる。お金が全てじゃないけど、親切に対して返すにはそれしかない。
お礼を言ってお別れした。わざわざ Uターンして拾ってくれなければ、今頃まだ畑の間を歩いていたかもしれない。笑い泣きしながら🐏